「マーキュリー通信」no.118【三井物産(株)槍田(うつだ)社長は退任すべし】
東京都の環境政策の一環として排ガス規制が実施され、その排ガス浄化装置のデータ捏造で三井物産(株)の担当室長と同室員、関係会社社長が詐欺罪で逮捕された。
この事件発表の当日、三井物産(株)鎗田社長は記者会見の席上姿を現さなかった。そして、同社長は2月末に発表した本人の減給3ヶ月だけで、追加処分はない旨発表した。この対応見て、三井物産(株)社友(OB)の私としては非常に残念な思いがする。同社長は、国後島ディーゼル発電施設工事の入札妨害事件で三井物産(株)から逮捕者が出るに及んで、清水前社長が引責辞任した後を受けて、平成14年10月社長就任したいきさつがある。
就任直後、同事件を深く反省し、かかるような事件を2度と起こさぬよう社内では、「コンプライアンス、コンプライアンス(法令遵守)」とお題目のように唱えてきた。 そして、2002年11月に『三井物産の志すもの』として、「人と社会と共に歩む三井物産」のスローガンを掲げてきました。
しかし、そのような状況下、今回再び大不祥事が起きた。今回も前回同様、社内では「コンプライアンス、コンプライアンス(法令遵守)」のお題目の嵐が吹き荒れている。\n 一方、三井物産?鰍ナは2005年3月期連結決算で1211億円という史上最高の当期純利益を達成した。
三井物産(株)のような大手総合商社の場合、国内外の利権ビジネスに深く関与していることが多い。国内においては官公庁から天下りを受け入れ、関係省庁との関係緊密化を図る。これも1つ間違えば、官公庁からの情報漏洩と汚職に発展する恐れがある。
一方、海外においてはODA絡みで現地政府等とのパイプ作り。必ずしもきれい事で済まないことも多い。日本的感覚で見れば明らかに犯罪行為でも、現地では必要悪として対応せざるを得ないことも多い。海外のダーティビジネスに長年関与してきた大学の先輩と久しぶりにあったときのことです。大学時代は爽やかなスポーツ青年で、後輩の私が見てもかっこいい先輩でしたが、あの好男子の先輩の面影はすっかり消え、全く異質の波動を感じたことを今でも鮮明に記憶しています。
法令遵守に忠実に本当にダーティな部分を排除してしまえば、三井物産?鰍ェ掲げてきた経常利益一千億円の夢は夢物語になるというジレンマに陥る。物産マンには、儲けに向かってただひたすら邁進していくという悲しい性がある。通常は法令遵守という物産マンとしてのブレーキ・見識が働くのですが、どうしても過酷なノルマの重圧から危ないビジネスに手を出してしまうリスクが潜んでいる。
物産マンの場合、ボトムアップ型経営なので、槍田社長自身排ガスデータ捏造事件は知らなかったはずです。しかし、知らなかったからといって今回の事件の責任から逃れられる訳ではありません。そのような事件が発生する温床、組織風土を、前回の事件を契機に大変革できないまま過去2年半社長として経営に携わってきたわけですから、その責任は重大です。
もし、鎗田社長が退任しなければ、悪しき前例が出来ます。逮捕者がでるような大事件が起きても、社長は3ヶ月の減給という軽い処分ですむなら、社員の志気は落ちます。そして、社内外に対する悪影響も大きく、大多数の社員はやるせない思いに駆られてきます。ここは潔く引責辞任して、後任に譲るべきです。1211億円もの最高益を出したのは、鎗田社長だけの経営手腕ではありません。バブル崩壊以降不振を極めていた鉄鋼部門がよみがえり、その他素材市況の活発化が決算に貢献しており、この最高益の裏には、これまでの経営陣の汗の結晶の部分も含まれています。
鎗田社長の評判は、事件発生以前からも、我々OBには決して良いものではありません。同社長の驕りがOBにも伝わってきます。物産にはまだまだ人材が沢山います。鎗田社長の勇気ある決断に期待しています。
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