「マーキュリー通信」no.263【戦後60年を考える】
今年は戦後60年に当たる節目の年。戦後60年を振り返ると、良きにつけ、悪しきにつけ、米国の支配、影響を直接、間接的に受けた60年間でした。
その中で私が一番強く感じているのは、このマーキュリー通信でも何度も触れてきたように、「精神的荒廃」を一番強く感じます。その最たるものが、現在国民的関心を呼んでいる「耐震強度偽装」事件です。■br 戦後の占領統治下、米国が日本に対し一番恐れたことの1つに武士道をベースにした日本人の精神的態度・魂でした。 その為に、戦後の日本国憲法で、日本人の精神的支柱であった宗教心・武士道精神を骨抜きにするために宗教を形骸化し、米国の意図は見事に功を奏しました。
戦後合理的尺度に合わない代表として宗教を軽視したお陰もあり、日本はひたすら合理的追求だけを求め、奇跡的ともいえる経済復興を果たしました。これは、戦前の財閥を解体して、日本に経済力を持たせることを恐れた米国の意図に反したことでした。
しかし、現在いたるところにその反動・軋轢(repercussion)が来ています。
次の60年間、21世紀に日本がとるべき事は、この反動・軋轢(repercussion)の修復といえます。現在、政治経済社会において、様々な事件、事故が起き、「揺り戻しせよ!」という天のお告げが来ているように思えます。
その具体的事例が、耐震強度偽装事件です。今年1月に阪神大震災10周年記念行事が各地で行われました。しかし、実際には阪神大震災を風化させないための行事が中心であり、どうしたら2度とこのような悲惨な事故が起きないようにさせようとする意識が政官民共に弱い感じがしました。そこに耐震強度偽装事件が起き、今度こそ待ったなしです。1981年以前に建てられた木造家屋は全国に1150万戸あり、姉歯物件と同様の耐震強度です。この耐震補強対策をしっかりやらなければならないことにやっと政官民共に気付き始めました。しかし、気付いただけで、すぐに具体的行動にまでは行っていません。 ここで、阪神大震災クラスの地震が発生すれば、再び悲惨な状況が国民の前に明らかとなり、姉歯事件が引き金となって、政官民が雪崩を打ったように耐震補強に邁進することとなるでしょう。
一方で、幼児虐待・虐殺事件が後を絶ちません。この為、学校、家庭、地域が一体となって幼児・児童を守ろうという動きが全国的に広まっているようです。これも希薄化した地域の連帯感を取り戻す一つの揺り戻し現象ともいえます。
それでは、この精神的荒廃を取り戻すにはどうすればよいのか?
私は、仏教、儒教、神道を融合し発展してきた「武士道の精神」を今こそ復活すべきと考えます。 但し、武士道というと、「智」の部分に欠けている嫌いがあります。どうしても視野狭小の部分があります。 軍事力では米国に圧倒的に叶わないことが判っていたのに、精神力だけで日米開戦をしてしまった当時の為政者な愚かな行為は今でも日本人の大きなトラウマになっています。 このことは時の為政者が「義」を重んじるばかりに、多数の一族郎党を悲惨な目にに追いやった史実が多数存在します。忠臣蔵の「忠義」等もその典型的事例です。
そこで、21世紀には、「武士道の精神」に「智」の部分を加え、新時代にも耐えうるような精神的支柱を為政者は国民に示し、そしてそれを教育に取り組んでいくべきと考えます。 ゆとり教育は、子供に対する単なる甘やかしに過ぎません。子供の時期に教えることは、「ゆとり」ではなく、「精神的に大事な拠り所、心の教育」を教えるべきであり、「厳しさ」こそ子供に対する真の愛情です。 教育界でも、既に揺り戻し現象が起きているようです。つまり国のゆとり教育による子供の学力低下が深刻となり、このままでは放っておけないと考える親が増えるようになったようです。
さて、最後に、米国型合理的精神により、日本は「勝ち組」と「負け組」が顕著となる時代に移行しつつあります。しかし、私はここで言っておきたい。米国のように、「勝ち組」と「負け組」が顕著となる社会は、犯罪が頻発し、住みにくい世の中となることが予測される。 しかも精神的支柱を失った日本人にとり、キリスト教という精神的支柱を持っている米国よりひどい犯罪社会となるかもしれない。
少子高齢社会に急速に突入していく中で、高齢者も働かざるを得ない厳しい社会であることを国民に認識させつつ、ある程度の「勝ち組」と「負け組」は許容しながらも、弱者にも優しい社会に移行させることが、経済財政問題の一方で、現在為政者に求められている重要施策の1つと考えます。
尚、「武士道」に関しては、新渡戸稲造の「武士道」他関連解説本が多数出版されていますのでそちらをお読みください。武士道の良さを改めて知る良い機会と思います。
| 固定リンク | 0
コメント