「マーキュリー通信」no.286【本日は阪神大震災11周年】
本日は阪神大震災11周年の日です。昨年10周年では、各地で記念行事が行われましたが、私の感想は、「阪神大震災の教訓を風化させない」でした。
昨日、NHKのクローズアップ現代でも阪神大震災の教訓が殆ど活かされず、耐震補強は殆ど進んでいない旨報道されていました。そして、それを積極的に推進しない国の姿勢を批判していました。
昭和56年(1981年)の建築基準法改正で、木造家屋に筋交いを入れることを義務づけました。しかし、施工に関しては特に基準を設けなかったために、釘で筋交いを打ち付けるものが3分の1程度存在するそうです。筋交いは、金具でしっかりと固定して初めてその効果を発揮するのですが、釘打ちでは効果半減です。
又、筋交いはバランス良く配置されてその効果を発揮するのですが、顧客ニーズを優先する余り、偏った筋交いの配置も問題にしていました。偏った筋交いでは、建物が倒壊しやすいことをNHKの実験で証明されました。
国の筋交いに対する基準が明確になったのが、平成12年(2000年)からなので、それ以前に建物は、念のため耐震診断をして、耐震強度の調査をすることを奨めていました。番組で紹介された注文住宅建築でも、筋交いの配置が悪く、国の基準値に満たず、「倒壊の恐れあり」との耐震診断の結果が出ました。
一方、今朝のNHKでは震災後の神戸の復興状況を報道していました。あれから11年経ち、復興したのは全体の8割で、未だ2割は手つかずの状態だそうです。その際、土地所有者(強者)と借家人(弱者)とで神戸市の対応が異なり、土地所有者は市営住宅に優先して入居できたそうです。神戸市は、震災を期に道路幅を2mから9mに増やしたそうです。2m幅の道路では消防車が進入できず、消火活動に大きな障害となった事への反省だそうです。
私が住む北大塚地区の近所でも、自転車のすれ違いができない狭小の裏路地が多数存在します。もし、大地震が来たら、多数の家屋は倒壊し、火事が発生し、火事はどんどん延焼していくことは明白です。しかし、行政は何も手を打っていません。やはり、阪神大震災のような大地震が来ない限り、この国の行政は具体策を打たないようです。多数の家屋が倒壊し、多数の死者が出て、初めてその愚かさに改めて気付くようです。
先週も、江戸川区船堀の木造住宅の耐震診断を行いました。その住宅は、増築の際に、2階の真下に駐車場を作りました。こういう建て方は地震に弱く、阪神大震災の時に多数倒壊したことで大きな問題となりました。耐震診断したK宅は、昭和56年以前に建築した建物で、筋交いはもちろんなく、診断結果は、姉歯物件以下の耐震強度であることが判明しました。
私は、耐震補強費用としては百万円程度かかるので、家族で充分相談の上、ご連絡くださいと申し伝えました。家族会議の結果、「死んだらはいそれまでよ」との結論。まだまだ命よりお金の方が大事な家庭が多いようです。これが庶民感覚のようです。
耐震補強には、自助、共助、公助の3つがありますが、一番重要なのは自分の家と家族の命は自分で守るという自助ですが、まだその重要性に国民の意識がいっていないようです。そこで、政策として、耐震補強した住宅には、地震保険をかけ、万一倒壊したら全額補償することを政策面で推進すべきだというのが、地震学者で第一人者東大目黒教授の持論です。又、固定資産税も優遇することで、耐震補強の促進を図る。これが公助です。
一方、自治会単位で、倒壊しそうな塀の補強や、取り替えを推進していく。そして、地震の際の安全な避難路を確保する。これを自治体が助成金も出して後押しをしていく。これが共助です。
この自助、共助、公助の組み合わせにより、地震大国日本において、地震に強い家屋作り、町作りをしていくことで、経済的損失を最小限に抑える減災の考え方を国、自治体、国民が一緒になって考えていくことが喫緊の課題であると阪神大震災11周年の本日強く感じた次第です。
(追記)
当社では、NPO法人日本耐震防災事業団の地域加盟企業として、同事業団の全面的協力を得て、耐震防災を推進中です。その為の耐震診断を事業団が他の民間企業の2分の1から5分の1程度の安価(35千円)な料金で実施中です。耐震診断と同時に、耐震補強に関する具体的な提案も出ます。ご自宅の耐震強度に不安の方は、ご一報ください。
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