「マーキュリー通信」no.423【渡部昇一氏の「国益論」に学ぶ】
日本政府並びにマスコミは北朝鮮がミサイルを発射して、右往左往しています。これまで日本の国益とは何かを政府もマスコミも真剣に考えていないツケがあらゆる場面、局面で現れています。
これを機に「日本の国益とは何か」を真剣に考えたら良いと思いますが、渡部昇一の「国益論」(徳間書店、1680円)は参考になるので、その一部を紹介させて頂きます。
日本は戦略なき国家であることを多数の識者から度々指摘されています。その最たるものが日本国憲法です。
日本国憲法の前文は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意した」と書いてあります。
しかし、今回の北朝鮮のミサイル発射事件で、この前文がいかに空しいことであることを多数の日本国民は思い知らされました。
凡そ北朝鮮のようなならず者国家に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」という理屈が通るわけありません。やくざに問いかけているようなものです。ロシアや中国も然りです。国連安保決議を見ても、ロシア・中国は日本の提案に反対です。
話は若干それますが、マッカーサーが米国の国益のために1週間で創った現行日本国憲法を護憲護憲と共産党が主張してきたのをこれまで私には理解できませんでした。
しかし、本書を読んで明快に理解できました。
共産党もマッカーサーが創った日本国憲法には当初反対でした。しかし、1952年4月28日サンフランシスコ講話条約に日本が調印した際に、米ソ対立鮮明になり、冷戦がスタートしました。
その時、日本の再軍国化による日米軍事同盟の強化を恐れ、日本共産党に対しスターリンから憲法第9条を死守するよう指令が下ったそうです。その時から日本共産党は大義名分としては、「日本の再軍国化を阻止し、日本国の平和を守る」ことが党の重要政策となってきたそうです。
スターリンは、社会主義体制の下に1千万人の以上の自国民を粛正し、大量殺戮を行いました。もっと凄いのは毛沢東で何と2千万人以上の中国人を殺戮したそうです。歴史上記録に残る最悪の殺人鬼といえます。
渡部氏の説明によると、左翼と右翼も社会主義を信奉するところは同じだそうです。但し、左翼は無神論、右翼は天皇制護持が思想的基盤となっているところが違うそうです。
話を元に戻し、日本人が何故憲法改正に消極的になっているのかというと、明治憲法が不磨の大典といって一度も改定されていないことから来るのだろうと推論しています。
明治憲法は、国会議員の9分の4が賛成すれば、改正できたのですが、恐れも多くも天皇の憲法を改正することに恐れを抱いていたようです。
もし、明治憲法を当時の実態に即した変えていたら、あの悲惨な大東亜戦争に突入していなかったかもしれないと推論しています。
当時の政府の政治がおかしな方向に走っていったのは、最後の2年間、即ち昭和19~20年だったそうです。渡部氏は、昭和18年当時中学生でしたが、当時の英語教科書には敵国英国の写真が載っていたほど、まだおおらかだったそうです。
翻って、現行日本国憲法も第9条以外に実態に合わない部分が多数あります。例えば、言論の自由。言論の自由のはき違えによりマスコミの暴走が頻繁におき、個人のプライバシーを平気で侵害しています。裁判になっても、言論の自由をタテに、マスコミの有利に働いています。先日の女子大生K子さんの誘拐事件でK子さんに対する執拗な取材攻勢が続きました。これなども明らかにプライバシー侵害であり、憲法で明記してあれば、マスコミの暴走は防げました。
このように現行憲法だけとっても実態にそぐわず、かなり日本国益を損ねている部分があぶり出されてきます。
日本国憲法は、マッカーサーが自分の女性の秘書官に1週間程度で応急的に創らせたものであり、本来、サンフランシスコ講話条約の発効時点で、ご破算にして作り直すべきでした。
これまで改憲の重要性を主張した首相は少数派でしたが、その中に故岸信介氏がいます。岸元首相は、日本国の国益のために、身体を張って日米軍事同盟である日米安保条約を締結した後、退陣しました。それ以外にも岸元首相の識見と日本への貢献度は卓越しており、もしあの時岸信介首相が体を張って安保条約の締結をしていなければ、今の日本はどうなっているか判らない。その意味で、戦後日本の最高の首相であり、もっと評価が高くても良いといえます。
本書は、他にもっともっと傾聴すべき意見が沢山盛り込まれています。マーキュリー通信で書いてある部分だけ読むと、短絡的な人は直ぐに渡部氏は右翼主義者ではないか早合点しそうです。しかし、前段でも述べたように、右翼主義者は社会主義信奉者であり、渡部氏は、社会主義の悪弊、そして社会主義は行き着くところ大量殺戮に結びつく恐ろしい悪魔の思想と結論づけています。
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