「マーキュリー通信」no.509【私の異見・ひと言申す-17「安倍新総理に期待する-3安倍晋三著「美しい日本へ」を読んで】
本書は、安倍晋三氏が自民党総裁立候補の前の7月に出版したものです。本の表題は「美しい日本へ」と書いてあるが、実質は安倍氏が総理なった際の所信表明といえる。
本書を読んで、安倍晋三氏のバランス感覚、そして政治家としての信念を感じます。
抗争を続けていた吉田自由党と鳩山民主党が1955年に合併し自由民主党となった。自民党結党の悲願の1つに、米国の国益の為に創られた日本国憲法を廃棄し、日本国自身による自主憲法の制定にあった。しかし、その後の政治情勢により先送りされ続け、20世紀が終わり、21世紀になってしまった。
現行憲法は、軍事力を米国に委ね、ひたすら経済発展のみに集中していれば良かった。しかし、一方で精神的荒廃は堕ちるところまで堕ちてしまった。その為にも憲法改正は急務となっている。
安倍晋三氏は、「国益」とは、国家の主権であり、独立であり、平和であることを明確に謳っている。「自由と人権」の重要性を力説している。その為に自国で安全保障を責任を持って遂行していく重要性を説く。
この関連で、安倍晋三氏の北朝鮮拉致事件に対する取組は卓越している。北朝鮮拉致被害者が土井たか子党首の社会党に訴えても相手にされなかった。又、外務省も変な争いに巻き込まれることを恐れ、対応してくれなかった。
しかし、安倍氏は、北朝鮮拉致事件は、「自由と人権」の侵害であり、独立国家の主権を脅かす極めて卑劣な行為であり、国家として許すことができない犯罪行為であるとの前提で、これまで拉致被害家族に接してきた。
この「闘う」姿勢が安倍晋三氏の政治家としての真骨頂であり、政治経験の少ない安倍氏が小泉政権の下で頭角を現し、一気に次期総理候補の筆頭に躍り出ました。
この「闘う政治家」の資質は祖父、岸信介首相の血筋を受け継いでいるようです。
岸信介首相は、国益を守る為に、60年安保の際に身体を張って、条約改正を実行した。当時私は小学校5年生。マスコミが大反対するので、安保条約は悪、それを強行する岸首相も悪者と思っていました。
次に、70年安保の時は大学3年生。当時の大学生の大半は社会党が掲げる非武装中立を支持し、安保条約を強行する佐藤首相を徹底糾弾しました。
現行憲法は、米国の思惑で僅か1週間で創り、我が国に押しつけたものです。米国は、日本の再軍備を恐れ、軍隊を認めませんでした。
しかし、その後ソ連の共産主義がアジアを席巻し、日本の再軍備が急務となった為、これまた米国の国益の為に、再軍備化が画策されました。
1953年4月28日のサンフランシスコ講和条約で、日本の独立が国際的に正式に認められました。しかし、その時吉田首相は、日本の独立の為に、日米2国間の秘密協定、つまり日本の再軍備化の協定にサインしました。もし、秘密協定にサインしていなければ、ソ連の強硬な反対に遭い、日本の独立は更に遅れ、戦後の奇跡な経済復興も遅れていたことでしょう。その意味では、再軍備化の協定調印はやむを得なかったものと思われます。
しかし、この協定は米国に極めて有利な内容で隷属的な内容でした。岸信介首相は、不平等な内容を対等に近い形に持って行き、同時に軍事、経済両面での二国間条約に成功しました。
日本の再軍備化への歯止めは、ベトナム戦争への不参加等一定の役割は果たしました。しかし、もし、安保条約が破棄されていたら、日本の奇跡的な復興は難しかったと多くの識者が指摘しています。
その意味で、戦後日本に最大に貢献した首相は吉田首相との評価が定着していますが、岸信介首相は2番目と評価する識者も多いですし、私もそう思います。
その血筋を引く安倍新首相、これまでのところは総理就任後直ちに中韓を訪問し、北朝鮮核実験問題にも果敢に挑戦し、その評価は高いです。
但し、年金問題に関しては楽観的すぎます。社会保険庁が、年金事務をコンピュータ化した時に、2割の人がスムーズに移行しておらず、年金の支払金額に不足が生じています。又、財源も我々団塊の世代が受給時期に入れば、一遍に吹っ飛んでしまいます。その辺の所に踏み込まずに、机上の計算だけが先行しているところが疑問です。
ともあれ、本書を読む限りでは、北朝鮮拉致事件に見せた闘う政治家、開かれた保守政治家として本領を発揮しており、政治家としての経験不足を補って、健闘しているといえます。私の採点では、今のところ及第点といえます。
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