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2007年12月22日 (土)

「マーキュリー通信」no.809【私の異見・ひと言申す-63「本日から保険商品を銀行の窓口販売開始」】

  昨夜のワールドビジネスサテライト(東京12チャンネル)で、12月22日から保険商品を銀行の窓口でも販売できることを放映していました。
 Izura2 窓販解禁の趣旨は「国民にとっての利便性の向上」と政府は言っています。しかし、昨夜のワールドビジネスサテライトを見る限りどうやらこれは建前であり、裏にはもっとどろどろとしたモノを感じると同時に、今後新たなトラブルの火種となりそうな予感がしました。本音は、1400兆円に及ぶ個人金融資産をいかに銀行が吸い取るかにあるように受け止めました。

 日本の保険商品はこれまで女性の外務員中心の超非効率な営業体制で臨んできた結果、欧米の保険料と比べ一般消費者は2倍も高い保険料を支払されてきました。生命保険販売は、戦後、多数の戦争未亡人の救済策的意味をもって開始されました。当時の日本の人件費は非常に安かった為、このシステムは作動しました。しかし、1ドル360円の円安の時代は終わり、現在はその3分の1の約120円です。日本の人件費は相対的に高くなり、高度成長時代の所得倍増で世界で最高レベルの高所得国家になりました。
 従って、窓口販売を認めるなら、「国民にとっての利便性の向上」ではなく、「競争を促進して、世界市場と比べ2倍もする保険料を世界標準並みにして、保険内容の充実を図る」が銀行窓販解禁の趣旨とすべきです。しかし、日本の生保と同様競争力のない日本のメガバンクに、「安くて質の良い保険商品」を望むことは期待薄です。なぜなら、大手生保が銀行の窓販指導に人材派遣をして、業務指導をしているからです。大手生保のノウハウの下に窓販を行ったら、「安くて質の良い保険商品」は望めません。

 ワールドビジネスサテライトでは、銀行に取材していたけれど、保険料を安くすることより、ワンストップ・ショッピング化を狙っていました。
 さて、ここで懸念されるのは、ワンストップ・ショッピングの趣旨の下、積立型保険商品の大量販売が行われる恐れです。依然ゼロ金利の時代において、積立型保険商品は売り手の都合優先の商品であり、消費者の利益にはなっていません。もし、個人金融資産が銀行に大量に吸い取られた場合、ただでさえ個人貯蓄の多い日本で、固定的な金融資産が更に増えることは大きな問題です。それは死産化してしまうからです。今後日本政府のとるべき政策は、いかに個人の金融資産を実需市場に出させるかです。銀行の窓販解禁は、それに逆行しています。そして、それは民間景気の足を引っ張ることになります。

 過去20年の銀行を見ると、銀行本来の経営哲学を忘れ、節操のなさが目につきます。バブル全盛の時代には無謀な貸し出し競争、バブル崩壊後は貸し渋り、貸しはがし、そして、最近では消費者金融業界(昔でいうサラ金)と組んで、個人ローン部門にも参入しました。しかし、こちらも規制が強化され、有望市場ではなくなりました。

 又、銀行が窓販に進出後は、立場の弱い企業が銀行からの無言の圧力で保険商品を購入せざるを得ない事態に追い込まれます。法的にはこれは禁止されています。しかし、実態は違います。
 当社でも融資を受けた後に、年金タイプの保険商品を勧められ、富国生命から購入しました。ゼロ金利商品なので、商品自体に魅力はありません。しかし、金融機関との好関係を保つ為に、やむを得ず加入しました。私が富国生命から保険商品を購入することは通常ならあり得ないことです。これが銀行の力です。無言の圧力です。各銀行で、保険商品の窓販業務を強化していった場合、このような問題が全国至る所で起きる恐れ大です。そして、中小企業の資金繰りにも影響しかねないことになります。

 一方、インターネットによる保険商品の販売も検討されています。コストダウンを図り、安い保険商品が企画されています。
 しかし、保険商品は殆どの家庭で加入しているけれど、中味を熟知して加入している家庭は殆どありません。極めて受け身的な商品です。従って、インターネットによる保険商品販売も、金融監督庁がしっかりと監督管理していかないと、安かろう悪かろう的粗悪商品が出回るおそれがあるので、こちらはかなり規制を強化しながら運用していく必要があると思います。

 さて、保険の銀行窓販解禁により一番の受難者は保険外務員です。現在、保険の売上の9割は訪問販売であり、その主役は女性外務員です。しかし、超飽和市場の保険業界で女性外務員の役割は年々低下し、現在ではピーク時の半数程度まで外務員数が減っています。
 今年の10月からは郵政のかんぽも民営化され、窓販解禁と併せ外務員不要時代が訪れます。個人情報保護法が強化され、保険外務員が各企業の職場に出入りできる時代は終わりました。私が勤務していた三井物産㈱でも、部外者はシャットアウトです。職場にあめ玉をもって女性外務員が頻繁に出入りしていたのは古き良き時代となりました。

 そして、今後は大量失業する保険外務員の受け皿をどうするのか、この辺の対策も政府がしっかりと立てておかないと、数年後には別の格差社会、ワーキングプア問題が大きく浮上する可能性が出てきますよ。

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