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2008年8月12日 (火)

「マーキュリー通信」no.974【偽善エコロジー】

友人から紹介された「偽善エコロジー」(武田邦彦著 幻冬舎新書777円)を読み、
これまでの環境、エコロジー、そして私たちが普段やっていた環境対策に対する
考え方が根底からひっくり返されてしまいました。

 著者は東大卒の工学博士、現在中部大学総合工学研究所教授、内閣府原子力安全委員会専門委員、
文科省科学技術審議会専門委員他多数の要職を兼務している方であり、長年の文
献調査と独自調査を基に発表しているのでかなりの信頼性をおける著作だと思い
ます。
 さて、何がこれまでの常識を根底から覆されたのでしょうか?本書には多数の
実例が掲載されていますが、一例を挙げるとスーパーのレジ袋追放運動が上げら
れます。
 スーパーのレジ袋は、もともと石油の不必要な成分を活用した優れものです。
もし、スーパーのレジ袋が日本中から消えたらどうなるのでしょうか。その場合、
石油の不要な成分の処分場と施設が必要となるという無駄が生じます。

 一方で、エコバッグに使われる原材料は石油の中で量が少なく貴重な成分である
BTX成分を使います。もし、レジ袋の代わりに全てエコバッグに切り替わったら、
石油の消費量が大幅に増加し、石油価格の上昇に繋がり、資源の無駄遣いとなり
ます。
 それではレジ袋追放で誰が得をするのでしょうか。レジ袋が市民権を得た時には、
消費者は無料でもらっていたレジ袋に2~5円程度支払うことになりスーパーの収
入となります。又、エコバッグの売上増加に繋がり、結局はスーパーが儲かるこ
とになります。

 次に、ペットボトルのリサイクルの例です。これも全く意味がありません。
 ペットボトルを地方自治体で回収しても、後は業者が処分するだけで、
その先は関知しないことになっています。実際にリサイクルとして利用されてい
るペットボトルは僅か5%程度に過ぎません。後は処分されたり廃棄されたりし
ています。
 又、役所の回収費用に400円程度掛かりますが、これを中国を始め外国に輸出しています。
輸出価格はその10分の1程度です。当然9割に当たる部分は税金です。民間のビ
ジネスなら400円で購入した商品を1割の価格で輸出したら当然倒産します。これ
を役所が関与すると税金の無駄遣いという感覚を持たずに平然と行われます。

 ペットボトルを他のゴミと一緒に燃やすと、空気の部分が多いので他のゴミが
非常に燃えやすくなります。ペットボトルを燃やすと害になると思っているのは
単に勘違いです。 現在、役所がゴミの分別回収として年間一人当たり5千円の
税金を使っています。しかし、全くのナンセンスといえる。個人が分別してゴミ
を出しても、正確さに欠ける。ゴミの中には毒性のものも含まれており、個人が
識別するのは不可能です。

 それではゴミ処分の正解は何か?金属類とそれ以外のものに分けて出す。
ただそれだけのことで、年間5千億円の税金の無駄遣いが節約できる。住民のゴ
ミの分別の手間が省け、環境にも却って貢献する。

 尚、ペットボトルのリサイクルが開始されてから、それまでペットボトルの生産量は
年間15万トン程度だったのが、現在ではその約4倍に増えているそうです。つま
り、ペットボトルのリサイクルにより、大量の石油資源を使いながらペットボト
ルメーカーが大儲けしている訳です。

 それでは何故間違った環境行政が行われているのか?それは利権の問題。
つまり、住民から集めた5千億円の税金を吸い取る業界、業者がいるわけです。1
人当たり年間5千円の税金はたいしたことはありません。しかし、5千億円の税金
を頂けるなら非常に魅力的であり、この利権に業者が群がるのは当然です。そこ
に「環境のため、エコロジー」という大義や耳障りのよい言葉がつくことで住民
の賛同が得られます。

 極めつけは家電リサイクル法です。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、クーラーの4品目は
処分する時にリサイクルするという名目で処分料を取られます。しかし、現在こ
の中の半分は処分されずに中古品市場に出回っています。その比率はどんどん増
えているそうです。これには大手家電メーカーも加担しているそうで、いずれこ
の事実が発覚して、社会的な大問題となることでしょう。

 家電リサイクル法施行前は、新品を購入する時は下取り価格で引き取り、
時には下取り価値ゼロのものでも値引き材料に使われていました。
 しかし、家電リサイクル法施行後は、下取り価格を支払う代わりに引取料金を
支払うことが義務づけられました。客から4千円のリサイクル料金を受け取り、5
千円で転売したら9千円の利益になり、とてもおいしい商売となります。この仕
組みができあがり、東南アジアに日本の中古家電製品が転売されており、東南ア
ジアの各国政府からは家電ゴミの輸出を日本はしていると非難を浴び始めている
そうです。

 そういえば、我が家で今年冷蔵庫を買い換えた時、7年前に購入した冷蔵庫だったので、
ヤマダ電機の下請け運送会社が気を利かしてただで引き取ってくれました。お陰
でリサイクル料金を支払わずに済みましたが、それはこの仕組みがあったのだと
今になって合点しました。
 
 それでは正しいエコライフとは何でしょうか?著者は訴えます。
 それは「心」です。昔は、ご飯粒を1粒でも残すと親から叱られました。
それはお百姓さんが丹精して作った米に感謝し、ものを大切にしようという心で
した。つまり、ものを大切に、長く使おうという気持ちが大事です。この心さえ
持っていれば、自然とゴミの量は減っていきます。
 
 現在政府と国民が一体となっている地球温暖化防止キャンペーンの為の
CO2削減等も本書を熟読するとなんと無意味なことをやっていることがよく判り
ます。

 日本人は6割の食糧を輸入しています。しかし、その半分は廃棄処分されています。
環境政策は、このように食料廃棄防止キャンペーンを政府が音頭を取るとか、もっ
と地に足のついた政策をやるべきです。

 最後に、日本の農業人口の過半数は65歳以上です。これに比べフランスは僅か4%、
英国は8%しかいません。逆に、35歳以下の若者は英仏共に3割前後もいるのに、
日本では僅か3%しかいません。国は、英仏の現状を調べ、若者に魅力的な農業
政策を推進すべきです。

 国のやるべき政策は、環境やエコといった大義を掲げて、役人の天下り先の確保や、
業者の為の偽善エコロジー、即ちエゴを止め、国民のためになる環境政策を推進
すべきです。
 本書を一人でも多くの方が読むことで、偽善エコの実態を理解し、お上の発想による
役人と企業のための環境政策でなく、国民の為の環境政策に転換して欲しいと切
に願う力となって欲しいと思っています。

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 【 編 集 後 記 】
 「偽善エコロジー」という名著を読み、またまた役所の本質を知った思いです。
 つまり、役所は大義の下に動く。その大義とは、今回は「環境、エコ」です。
しかし、現実にはそこには役所のエゴが働き、天下り先の確保、業者との利権構
造の確立が上げられます。
 今回も偽善エコという大義の下、又税金の無駄遣いが明るみに出ました。消費
税アップの前に、徹底的に税金の無駄遣いをチェックするべきですが、私から言
わせれば、水でぐっちょりと濡れたぞうきんを軽く一握りした程度といえます。

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