「マーキュリー通信」no.1230【シリーズ日本の生命保険の意義と問題点を再考する-2「何故、生保は破綻したのか?誰も語らない根本的な理由」】
生命保険の基本理念は「相互扶助」です。
1867年に福澤諭吉が、日本に近代的生命保険を紹介したことが発端と
なり、明治に生命保険会社が誕生しました。
生命保険会社の多くは相互会社です。相互会社の事業内容は保険事業
に限定されています。株式会社の生保も事業の性格上、保険事業以外の
事業もかなり限定されています。
ところが、現実にはどうでしょうか?
生命保険会社は、お客様から集めたお金を不動産事業や、株式、公社
債等の有価証券に投資しています。
実態は、生命保険事業以外やってはいけないという立法趣旨に反して
います。
生命保険会社が集めたお金は平成19年末で326兆円と膨大な金額です
。生命保険会社は金融機関の1つですが、集めたお金を運用して、利益
を上げ、それをお客様である保険契約者に還元するのは当然のことです。
しかし、ここに「生命保険商品の原点」「本来あるべき姿」から逸脱
し、思わぬ落とし穴に陥ったといえます。
本来の生命保険事業以外の事業拡大をやっていった結果、生命保険会
社が次々と破綻していったわけです。
さて、生命保険には「大数の法則」が働きます。
「大数の法則」とは、ある一定の規模以上になると、予定された比率に
収斂していくという法則です。
さいころを6回振っても、1から6までの数字が1回ずつ出てくる確
率は低いです。しかし、何万回も振っていると、そのうち各数字が6分
の1ずつ均等の割合になってきます。
これを人の寿命に当てはめたのが生命保険商品です。
生命保険料の内訳は、純保険料に生命保険会社の事業費と利益を加え
たものから成り立っています。
従って、事業規模が大きくなればなるに従い、利益が上がるのが生命
保険事業の収益構造となっています。
事業規模の拡大に伴い、事業収益が拡大していくので、
増加する剰余金は、(1)内部留保を充実させる(2)生命保険商品を
充実させる(3)保険料を値下げする
主にこの3点に限定して使えば、相互扶助の理念を遵守し、契約者の保
護と利益が確保できるわけです。
これをやらなかった為に、日本の生命保険料は世界一高い水準となっ
ているわけです。これは国民経済的に非常にマイナスです。
従って、生命保険商品を、掛け捨てだけに限定すれば、
326兆円の残高は大幅に圧縮でき、金融業をやる必要はありません。
日本全体から見ても、資金効率がよくなるわけです。
一方、国が不動産事業や金融業まで認めたから、バブルの崩壊と共に
生命保険会社が次々と破綻していったわけです。
10年以上ゼロ金利の時代が続き、生命保険商品は、貯蓄商品としては
魅力がありません。
生命保険会社の破綻の後、多数の生保が統廃合を行った結果、現在は
財務体質上問題のある生命保険会社はなくなりました。
しかし、生命保険会社は多数の政府国債を保有しています。国の借金
は現在800兆円以上あり、財政破綻により紙くず化する可能性は否定で
きません。
その時は、又破綻する生命保険会社が出てくる可能性もないとはいえ
ません。
従って、国は、生命保険商品本来のあるべき姿に戻り、損害保険会社
と同様に掛け捨て中心の生命保険商品に舵取りを切っていくことが望ま
しいと思います。
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