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2011年12月31日 (土)

「マーキュリー通信」no.1818【『日本のトリプル危機をどう予測する』第105回「新しい時代を創る経営者の会」】

103回「新しい時代を創る経営者の会」議事録

 

 今年の最後の「新しい時代を創る経営者の会」は、国際金融のプロ入山利彦氏におDsc01739


願いしました。これまでもサブプライムローンやリーマンショック等を、国際的視野に立ち、

入山利彦氏独自の切り口で語って頂き、大変好評を頂いております。

そこで、3年連続「新しい時代を創る経営者の会」のトリを務めて頂くこととなりました。

 

 入山利彦氏は、慶応大学時代小泉元首相と同じクラスで、それ以降親交を深めています。

又、小泉内閣で手腕を振るった竹中平蔵氏とも親交があり、人脈の広い方です。

 その広い人脈の中からも様々な情報が入ってきます。

 三菱商事在籍中は、主に財務経理畑を歩き、財務の金融子会社社長、情報産業管理部長を経て監査役に就任、全社のガバナンス、コンプライアンスを担当後、第一線に復帰、コンプライアンスオフィサー監査担当の執行役員を歴任し、顧問に就任、20086月末リタイアされました。

 

 今回は、私から3つのキーワード「東日本大震災、ユーロ危機、増税問題」の切Dsc01740


り口でご講演をお願いし、入山利彦氏独自の持論を展開して頂きました。

 

まず最初のキーワード、東日本大震災に関しては放射能汚染の問題。除染だけで

500兆円もかかると言われている。

東北を経済特区として、外国企業を誘致したらどうか。外国の生産設備を造り、自由貿易地域とする。こうすれば安全保障上も役に立つ。

 一方、100年かけてこの地域を外国即ち長崎の出島という特区=外国とし、日本人を疑似移住として派遣する計画を考えたらどうか。外国へ移住と同じ効果を挙げることで、国際化を図り、日本を根本的に改造することと、特区には当然外国人が移入して来るので雇用と人口増という一石二鳥となるのではないか。

 このことは、我が国は技術と資本を提供し、外国勢は生産と労働力を分担し、日本に於いての国際化を実現することを意味する。

 

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 今回の講演の中で、一番の目から鱗は、「ユーロはサブプライムローンと同じである」との自説です。

入山利彦講師からユーロの主要国以外の経常収支を見ると、全て赤字国です。つまり、信用力の無い国がユーロという単一通貨の下で経済運営をしてきた。しかし、所詮信用力がないわけで、いずれ破綻することは目に見えていた。

この仕組みはまさにサブプライムローンと同じ構造と言えます。

 

 ユーロの最強国ドイツ国民は、ユーロの劣等生ギリシャ、ポルトガル等を救う必要がないと不満を持っています。

しかし、ドイツ企業の立場からすると、ユーロ安のお陰で輸出が有利となり、外貨獲得に貢献しているわけです。

ユーロの悲劇は政治的思惑で、東西ドイツの統一後の新生ドイツが勝手に行動をすることのない様にという政治的判断で、経済・金融的判断は二の次で、つまり通貨のみを統一し各国の財政はしばらなかったことにあります。

これが各国の放漫財政を許すことになり、ユーロ通貨つまり表紙を一枚看板とし、最強国のドイツが最終的に責任をとる合意がないまま統合したことに問題がある。即ち通貨ではなく政治的思惑であるということです。

従って、ドイツが離脱することは出来ず、統合の枠組みをグレード別に分化させ実質上の崩壊状態で再編成されるものと思われる。結果としてドイツ・フランスが残り、他の国は離脱する形が想像される。これはあたかも地中海の帝国即ちローマ帝国が衰退し、十字軍が生き残る。別の見方では、ギリシャ・イタリア・スペイン・ポルトガルという海洋国の時代が終わり、ドイツ・フランスの内陸国が残ることになる。しかし、地球規模的には世界の覇権が海洋国から大陸国(ブリックス)に移ることと酷似している。これが新たな帝国主義の始まりかも知れない。(アメリカは大陸国であり海洋国であると言える。TPPはその覇権主義の表れと思え。)

 

最後のキーワード、増税に関しては、まだまだやるべきことは山ほどある。それが先決。

 例えば、消費税に関しては、輸出企業に対しては戻し税制度がある。だから輸出中心の企業は消費税アップに賛成している。又、零細企業の益税に関しても、消費税の取りこぼしがある。これをやるだけでもかなりの財源となる。

 更に、日本の法人税が少ない原因は、日本企業のグローバル化が進んでいるためである。日本企業は、法人税の安い海外で巨額の税金を支払っている。二重課税防止の国際協定により、グローバル企業は日本では支払わなくて済んでいる。

 一方で、社会福祉を考えるより、60歳代にもっと働かせる場を確保し、働かせる政策を促進すべきと考える。定年は70歳で良い。女性の就業率も低いので、女性の雇用促進にも力をいれるべきだ。なぜならば、家庭での最大の悩みは教育費の高負担にあるからである。

 こうすれば、社会保障関係の歳出は減少する。増税する前に、もっともっと知恵を絞り、果敢に実行すべきと考える。

 もう少し詳しく言えば、付加価値税を併用し、消費したら課税するのみならず、製造したら課税することも考え、或いは人頭税、外形標準課税、海外への移転価格税、更には預金や資産に対する資産税等まだまだ方法は多様であり、複合化し、高度化する社会に合った方法を考えるべきである。

 

 そして当然ながら、税の公平を担保する納税背番号制と、国民の所得のみならず福祉を総合的には把握する制度を導入し、「税の公平性」を担保することで実効を上げて行けば、フローの面での均衡は保てるのではないか。

 要は、税というのは1580年代に豊臣秀吉が行った検地という方法で整備さえた体系を現在まで引きずっている。今回国の税を根本的に変えるということは、国のあるべき姿を変えるということである。このような最大の国家課題を現民主党政権が理解しているとは思えない。

 増税の背景にはもう一つ最大の問題、赤字国債がある。国内マスメディアが日本国のバランスシートを論じないのは納得できない。

国債が 1,000兆円

これに国有資産   650兆円

   外国債券   270兆円

に使っているそうだ。

これを大量処分して、国債償還に充てる。この国有資産は民間に払い下げる。民間は、1,400兆円の金融資産を持っている。この内国債は900兆円としても500兆円は余力があるとすれば、国有財産の流動化は大いに期待できよう。

 

 さて、2012年の経済展望をしてみると、復興の公共事業で一時的に需要が高まり、景

気は良くなるが、一過性のものである(好景気は数年は続く)。しかし輸出は伸びない。原発の停止により、エネルギー転換を余儀なくされ、企業のコストアップに繋がり、企業収益を圧迫する。その結果、経常収支は底をつき、円の売りが始まる。その時に円安となる。

 

 入山利彦講師は、最後に2050年の日本を大胆に予測しました。

 

 省庁の役人は優秀なので、民営化し、シンクタンクとして政治家が活用すれば良い。

 国有財産700兆円の活用もできていない。その意味で、まだまだ余裕がある。

 日本は7つの州の連邦政府に移行するのではないか。これによりムダな行政コストも削減され、もっと住民に密接なサービス即ち地産池消()も期待できると言える。

 国民は自主独立で国際化を志向し、国境は陸のみならず海域で計ることになり(海域であれば世界7位の大国である)日本は陸のスイス海のスイスとなり、多国籍国家に生まれ変わる。

 国のリーダーは直接選挙で選び、国民が連帯責任を負う。そして小さな政府となり、劇的に国のコストが下がる。即ち全ての財は、エネルギーにせよ生産にせよダウンサイジング―即ち縮みの世界を実現し、新生日本となる。我が国が技術立国と言われる所以は、伝統的に縮みの文化で生き残ったと言われる。即ち、大きなものを小さくし効率化を推進する。例えばテレビや車、これを実現した半導体・通信手段、文化で言うとアニメとゲーム、古くは碁盤の目(18×18マス)・将棋(9×9マス)・和歌を俳句に、といったものが縮みの文化―それが日本を再生するキーワードであり、2050年には素晴らしい国に生まれ変わっているかもしれない。(残念ながら本日ご出席の皆様は再生日本を見届ける事はできない)

 日本の産業はダウンサイジング化され、益々省エネ化、高付加価値化され、生産は海外、文化は国内と、第四の文明国家として文化と科学が併立する国家となる。

 つまり、日本列島は真の自主独立の戦略列島となり、真の独立国家となる。そして海のスイスとなる。

 

 それから、年金について一言申し上げねばならない。

 全ての年金を2050年までに解散し、精算する。2050年からは積立方式にする。公と私による積立方式とする。これは大前提として雇用との組み合わせである。従って企業の役割は年金の積み立てに参加することではなく、雇用を生み出すことである。そうすれば、少子高齢化は怖くない。

 

 最後に、2050年を例えれば第四の文明とす。今までは技術と文化が融合して明治時代の文明開化を形成していた。2050年は技術と文化が併存し、技術の発展を促すと共にこれを使うことで人間の文化が新たにスタートする。

 日本はこの文化の担い手としてフロントランナーとなるでしょう。

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