「マーキュリー通信」no.5397【幸福になれない症候群-30「電通マンのぼろぼろ日記を読んで」】
書店で目についた元電通マン福永耕太郎著「電通マンのぼろぼろ日記を読んで」(フォレスト出版)を読みました。
一流大学を卒業し、広告業界の巨人電通にバブル期の少し前に入社して、同社の第一線で活躍してきた1960年生まれの彼を傍から観て、人生で成功した人物と映るでしょう。
大学時代に一目惚れした2つ年下の彼女に猛烈なアタックをかけ、見事ゲットします。
同書を読み、花形エリートビジネスマンの悲哀を感じました。
飲む(キャバクラ接待)、打つ(ゴルフ接待)、買う(キャバクラ接待)は、営業マンなら経験した人も多いでしょうが、電通の場合、スケールが全く異次元です。
そして、クライアントからの受注活動の為、家族を犠牲にしてきた人生でした。
最後は、ストレスと暴飲暴食で体を壊し、入院する。
出世コースから外れ、関係会社出向。早期退職に追い込まれる。
その時、かつて憧れの君だった奥さんから三行半を突きつけられ離婚。
マイホームを手放し、慰謝料に充当。
それまで電通の社員の信用力を使って、借金をしまくっていました。
退職してしまうと、信用がなくなり、収入もストップする。結局自己破産に追い込まれる。
その後、音信不通だった家族でしたが、ある日息子から「感謝している」とスマホにメッセージが届く。
そのメッセージを見て、彼は号泣し、つかの間の幸福感を味わい、真人間になろうと決意します。
実は私は商社マンでしたので、鉄鋼部門の営業マンの時は、彼ほど派手ではないでしたが、飲む打つ買うといった古い営業スタイルを取っていました。
国内の営業部門にいたときは、この営業部門の先行きはないと感じました。当時20代後半の若者の勘はその後その通りとなります。
その後、私はカナダ三井物産で石炭部門の責任者として新規炭鉱の開発業務に携わります。
私の仕事の1つとして、大手鉄鋼メーカーの原料部の接待がありました。
N鋼管の原料部N部長の私に対する評価はよくありませんでした。
赴任当時、麻雀の接待でした。当時31歳の私は、麻雀のメンツに加わらず、飲食の接待でした。
その時、N部長から、「腹が減ったから、食事を手配してくれ」と頼まれ、早速手配しました。
ところが本店から出張にやってきた石炭部S部長に、「今度、新しく来た菅谷は気が利かない。俺が食事の手配を頼んだのに無視した」と苦情が入りました。
当然無視などするわけありません。私が事前にN部長に「今夜の食事は何にしましょうか?」と聞かなかったことが、N部長の逆鱗に触れたことが分かりました。
N部長とのエピソードがもう1つありました。
アルバータ州の州都エドモントン市のホテル内での出来事でした。
ホテルで麻雀をしようと思ったN部長は麻雀パイがないことに気づき、激怒します。
そこで本店石炭部S部長に苦情を伝えます。
S部長は、事情を察し、当時息子がJTBバンクーバー支店に勤務していたので、電話して、直ちに麻雀パイとゴムマットを持って、エドモントン市のホテルまで持参するように指示しました。バンクーバーとエドモントンの距離は東京~札幌間程度です。
そこで何とか一件落着しました。
その時の私は、「俺はこんな男芸者をやるために世界を股にかけるビジネスマンになったわけではない」と思い、三井物産を退職することを考え始めました。
幸い、中曽根内閣の時に、通信の自由化が実施され、三井物産では10年ぶりに情報産業部門を立ち上げることになりました。そこで私は情報産業部門への異動を当時のカナダ三井物産社長に直訴し、了解を頂きました。
その後、私はテレマーケティングの新会社もしもしホットラインを創業します。
その10年後48歳の時に三井物産を早期退職することになるわけです。
もし、私が電通営業マン同様定年間際まで働いていたら、心身共にぼろぼろになっていたことでしょう。
その時、多くの物産マンが描く夢、一流大学を卒業して、一流企業に就職して、そこで出世コースを歩む幻想を捨てました。
その後、時代は大きく変わり、地の時代から風の時代へと価値観が変わっています。
終身雇用の時代は終わりました。
一流大学の卒業証書、一流企業での出世と収入を求める時代は大きく変わったと思います。
その時、三井物産を早期退職する物産マンはほとんどいませんでした。
しかし、今は時代が変わり、3年程度で辞める物産マンも増えてきました。これも時代の流れといえます。
1度しかない人生です。本当の自分に忠実に生きること、それが大切であることを、元電通マンの激白書を読んで感じました。
| 固定リンク | 0
« 「マーキュリー通信」no.5398【奇人変人が世の中を変える!-515「中国による沖縄侵略危機が少し待ったがかかった」】 | トップページ | 都知事候補インタビューをオンラインで直接視聴できます »
コメント